Subsections

B. 乱流パラメタリゼーション

1 乱流パラメタリゼーション

Klemp and Wilhelmson (1978) および CReSS で用いられている 1.5 次のクロー ジャーを用いる. このとき乱流運動エネルギーの時間発展方程式は,

795#795 19#19 796#796 (236)

と与えられる. 797#797 は混合距離で, 269#269 とする. 211#211197#197 はそれぞれ浮力と流れの変形速度によ る乱流エネルギー生成項, 798#798 は乱流エネルギー拡散項, 第 4 項は乱流 エネルギーの消散項であり,
799#799 19#19 800#800 (237)
202#202 19#19 801#801 (238)
802#802 19#19 803#803 (239)

である. ここで
804#804 19#19 805#805 (240)
806#806 19#19 807#807 (241)

である. 1.5 次のクロージャーでは速度の 2 次相関量を以下のように表す.
808#808 (242)

また, 176#176 の場合,
809#809 19#19 810#810 (243)
811#811 19#19 812#812 (244)
813#813 19#19 814#814 (245)

と表し, 815#815 の場合,
809#809 19#19 816#816 (246)
811#811 19#19 817#817 (247)
813#813 19#19 818#818 (248)

と表す. ここで 247#247 は運動量に対する渦粘性係数, 248#248 はサブグリッ ドスケールの乱流運動エネルギー, 255#255 は渦拡散係数, 256#256 は相当 温位である. 247#247, 255#255248#248 を用いて以下のように与えられる.
819#819 19#19 820#820 (249)
821#821 19#19 822#822 (250)

パラメータ 823#823 はともに 0.2 である.

1 乱流運動エネルギー方程式の導出(雲が存在しない場合)

Klemp and Wilhelmson (1978) ではB:dEdtについて, 「Deardorff (1975), Mellor and Yamada (1974), Schemm and Lipps (1976) で用いられ ている式と類似のものである」とだけ記述され, その導出の詳細については解 説されていない. それゆえ大気大循環モデルでよく用いられている Mellor and Yamada (1974, 1982) のパラメタリゼーションとの対応が不明瞭であ る. そこで以下では Mellor and Yamada (1973, 1974) の定式化の手順に沿っ て式B:dEdt, レイノルズ応力1, レイノルズ応力 2 - レイノルズ応力4 の導出を行う.

考えているサブグリッドスケール内において, 密度は一定, 動粘性係数や拡散 係数などの物理定数は一定とする. またサブグリッドスケール内での放射の影響は考慮しない. 出発点となる方程式は, Mellor and Yamada (1973) の式 (7) および (8)

824#824 825#825 826#826  
  825#825 827#827  
  19#19 828#828  
  825#825 829#829 (251)


830#830 825#825 831#831  
  19#19 832#832 (252)

および, MY1974:eq(7)において 833#833 とした式
834#834 825#825 835#835  
  19#19 836#836 (253)

である. ここで

837#837


で, 838#838, 839#839 はそれぞれ動粘性係数, 拡散係数, 840#840 は重力加速度ベ クトルの第 841#841 成分である.

MY1974:eq(7)およびMY1974:eq(8)に現れる圧力に関する相関項 および 3 次の相関量については以下の仮定をおく.

  1. 842#842 (圧力による運動エネルギーの再分配)


    843#843

    とおく. ここで 844#844 は乱流の特徴的なスケール, 212#212 は無次元の定数である.

  2. 845#845 (圧力による熱エネルギー再分配)

    1. の導出と同様の考察によって,

    846#846

    とおく. ここでの乱れのスケールは 847#847 とする.

  3. 848#848 (粘性による散逸)

    粘性に関与するような小スケールの現象は等方的とみて 849#849 のみ で表現する.

    850#850

    ここで 851#851 は粘性の及ぶ特徴的スケールである.

  4. 852#852


    853#853

    とおく.

  5. 854#854

    速度変動による 854#854 と考え次のようにおく.

    855#855


    ここで 856#856 はそれぞれの特徴的スケールである.

  6. 857#857 (圧力変動による拡散)


    858#858

    とする. この近似は Deardorff (1975), Schemm and Lipps (1976) でも行われている.

  7. 859#859 (コリオリ項)


    860#860


    861#861

    とする. この近似は Deardorff (1975), Schemm and Lipps (1976) でも行われている.

  8. 862#862


    853#853 (254)

    とする.

以上の近似をMY1974:eq(7), MY1974:eq(8), qの予報式 に対して行うと, 以下の式を得る.
863#863 864#864 865#865  
  19#19 866#866  
    867#867 (255)
868#868 864#864 869#869  
  19#19 870#870 (256)
871#871 825#825 872#872  
  19#19 873#873 (257)

ここで

874#874

である. これらは Mellor and Yamada (1974) の Level 4 モデルの式に対応 する式である.

MY1974:Level4(1), MY1974:Level4(2), MY1974:Level4(3)に対し, さらに以下の近似を加える.

これらの近似を行うと, 式MY1974:Level4(1), MY1974:Level4(2), MY1974:Level4(3)は
878#878 19#19 879#879 (258)
880#880 19#19 881#881 (259)
871#871 19#19 882#882 (260)

となる. MY1974:Level1(1)は Mellor and Yamada (1974) の Level 1 モデルの 883#883 の式である. MY1974:Level1(2)は Mellor and Yamada (1974) の Level 1 モデル の 884#884 の式で 885#885 の項を無視したものに対応する. MY1974:Level3(1) は Mellor and Yamada (1974) の Level 3 モデ ルの 886#886 の式において, 3 次相関項を無視し粘性拡散項を残したものに 対応する.

雲が存在しない場合, 887#887, 888#888 は保存量であるので, 887#887, 888#8881#1 と同一形式の時間発展方程式を満たす. 従って, 884#884 を導いたのと同様 の近似を行なうことにより, 次式を得る.

889#889 19#19 890#890 (261)
891#891 19#19 892#892 (262)

但し 893#893, 894#894 は各物理量に関する乱れのスケールである.

895#895 とし, 849#849248#248 で表し動粘性係数を乱流拡散係数で置き換えると

878#878 19#19 896#896 (263)
897#897 19#19 898#898  
  19#19 899#899 (264)
795#795 19#19 900#900 (265)

となり, 乱流エネルギーの式は散逸項の係数を除きB:dEdtに一致 する.

以上より, Klemp and Wilhelmson (1978) の乱流パラメタリゼーションは, Mellor and Yamada (1974) の Level 3 モデルと Level 1 モデルとを組みあ わせたものと理解することができる. Klemp and Wilhelmson (1978) と同様に 乱流運動エネルギーのみ予報し他の相関量は診断的に求めるモデルとして Mellor and Yamada (1974) の Level 2.5 モデルがある. しかし Level 2.5 モデルは Level 3 モデルと Level 2 モデルとの組合せであることに注意が必 要である.

2 乱流運動エネルギー方程式の導出(雲が存在する場合)

飽和湿潤過程における熱力学的保存量は 256#256, 888#888 である. そこで浮力項の中の 103#103, 901#901 902#902, 903#903 で表す.

飽和状態における物理量には * 印を付すことにする. 飽和比湿 904#904 を基本場近傍で Taylor 展開すると,

905#905 349#349 906#906  
  19#19 907#907 (266)

となる. 比湿の定義より,
908#908 19#19 909#909  
  19#19 910#910  
  19#19 911#911  
  19#19 912#912 (267)
913#913 19#19 914#914  
  19#19 915#915 (268)

が成り立つ. 但し moistturb2 の変形の途中で Clausius-Clapeyron の式
916#916     (269)

を用いた. moistturb2, moistturb3 を moistturb1 に代入す ると,
917#917 19#19 918#918 (270)

となる. ここで
919#919 (271)

となることに注意すると,
917#917 19#19 920#920  
  19#19 921#921 (272)

となる. moistturb6 より
922#922 19#19 923#923 (273)

が得られる. B.1.1 節同様, 924#924 とすると,
922#922 19#19 925#925 (274)

となる. 相当温位の定義より,
926#926 349#349 927#927  
  19#19 928#928  
  19#19 929#929 (275)

となる. moistturb9 より
930#930 19#19 931#931 (276)

となる. moistturb8, moistturb10 より
932#932     (277)

902#902, 903#903 は保存量なので, B.1.1 節での 1#1 と同一形式の時間発展方程式を満たす. 従って,

933#933 19#19 934#934 (278)
891#891 19#19 935#935 (279)

を得る. 但し 936#936, 937#937 は各物理量に関する乱れのスケールである.

938#938 とし, 849#849248#248 で表すと,

878#878 19#19 896#896 (280)
897#897 19#19 898#898  
  19#19 939#939  
    940#940  
    941#941 (281)
795#795 19#19 942#942 (282)

となる.

3 3 次元の場合の表現

3 次元の場合のB:dEdt式の各項を書き下す. 先ず浮力による乱流エネルギー生成項を書き下す. 雲が存在しない場合,

799#799 19#19 943#943  
  19#19 944#944  
  19#19 945#945 (283)

である. また雲が存在する場合,
799#799 19#19 943#943  
  19#19 944#944  
  19#19 946#946  
    266#266  
    947#947 (284)

となる. 次に流れの変形速度による乱流エネルギー生成項 197#197 は,
202#202 19#19 948#948  
  19#19 949#949  
  19#19 950#950  
  19#19 951#951  
    952#952  
    953#953  
  19#19 954#954  
    955#955  
    956#956  
  19#19 957#957  
    958#958  
    959#959 (285)

である. 乱流エネルギー拡散項 798#798 は,
802#802 19#19 960#960  
  19#19 961#961 (286)

である. 以上の B, S, De 式を B:dEdt 式 に代入することで雲が存在しない場合の乱流エネルギーの式を得る.
795#795 19#19 962#962  
    963#963  
    958#958  
    262#262  
    964#964  
    965#965 (287)

B:E を用いて 966#966248#248 で書き換えると, 以下の式が得 られる.
257#257 19#19 258#258  
    259#259  
    260#260  
    261#261  
    262#262  
    263#263  
    967#967 (288)

また B-moist, S, De 式を B:dEdt 式 に代入することで雲が存在する場合の乱流エネルギーの式を得る.
795#795 19#19 946#946  
    266#266  
    968#968  
    963#963  
    958#958  
    262#262  
    964#964  
    969#969 (289)

B:E を用いて 966#966248#248 で書き換えると, 以下の式が得 られる.
257#257 19#19 258#258  
    265#265  
    266#266  
    267#267  
    260#260  
    261#261  
    262#262  
    263#263  
    967#967 (290)

Yamashita Tatsuya 2010-04-28