: 地球流体理論マニュアル
 : 火星現象論
火星現象論: 火星地表の熱慣性
地球流体電脳倶楽部
1996 年 12 月 12 日
 
概要:
火星地表の熱的性質(熱慣性)を概観する.
熱慣性とは「単位体積あたりの熱容量×単位時間の熱拡散距離」で与えられる.
密度 
, 熱伝導率 
, 熱容量を 
, 熱拡散距離を 
 とすると,
と与えられる.
測定単位としては 
cal cm
 sec
 が用いられる.
熱慣性の小さいところは温まりやすく冷めやすい.
岩石の密度と熱容量はほとんど一定であると考えてよいので, 熱慣性は
熱伝導率に依存するといえる.
熱伝導率に影響するのは岩石の間隙率(porosity)である.
一般に間隙率が大きいと熱伝導率は小さいので, 熱慣性も小さくなる.
経験的には, 構成物質の粒径が小さいと熱慣性は小さい.
火星地表の熱慣性の値について, 以下のことがわかっている.
ただし単位は 1 節で定義したものである.
- 地表で 1-15 .
露出した岩石で 30 を越える(Kieffer et al., (1977); Palluconi and Kiffer,
 (1981)).
 
- 分布をとると 6 と 2.5 付近に集中している.
対応するアルベドの値は 0.135 と 0.275 (Kiffer et al., (1977)).
 
図1 に全球の熱慣性分布を示す.
- 白; 熱慣性の小さい領域.
構成物質の粒径は細かい.
20
N 330
W 付近と, 
Tharsis, Amazonis, Arcadia Planitiaeを含む広い地域.
 
- 黒; 熱慣性の大きい領域.
構成物質の粒径は大きい.
南半球の Argyre, Hellas basin,Chryse Planitiae.
北半球では Acidalia, canyon, Utopia, Elysium Planitiae の東.
 
図1 表面の熱慣性分布(NASA/JPL; Carr, 1996, 図1-6).
- Carr, M.H., 1996: 
	Water on Mars, 
	Oxford Univ.Press, 229pp.
 
- Kiffer, H.H., Martin, T.Z., Peterfreund, A.R., Jakosky, B.M., 
	Miner, E.D. and Palluconi, F.D., 1977:
	Thermal and albedo mapping of Mars during the Viking primary mission,
	J. Geophys. Res., 82, 4249-4291. 
 
- Palluconi, F.D. and Kiffer, H.H., 1981:
	Thermal inertia mapping of Mars for 60
S 
	to 60
N,
	Icarus, 45, 415-426. 
 
謝辞
本稿は 1996 年に東京大学地球惑星物理学科で行われていた, 
固体火星セミナーでのセミナーノートがもとになっている. 
小高正嗣によって地球流体電脳倶楽部版「火星現象論」
として書き直された (1996/12/12).
構成とデバッグに協力してくれたセミナー参加者のすべてにも
感謝しなければならない.
本資源は著作者の諸権利に抵触しない(迷惑をかけない)限りにおいて自由に利用
していただいて構わない. なお, 利用する際には今一度自ら内容を確かめること
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Odaka Masatsugu
平成19年5月29日