まだ作成中ですので、絵やグラフはありません。文章もHP向けとしては堅すぎるし、もっと説明が必要なのですが、それはおいおい。ということでまだ建設中。

クレーター形成過程に対するスケーリング則の実験的研究

 太陽系にある固体惑星や衛星の地表に存在する衝突クレータの解析から、衝突天体の情報(サイズ分布、軌道及びそれらの時間的進化等)が推定される。 また、クレータ年代学を基に地域別の形成年代が、またクレータの形態変化の比較から衝突時の環境が推定され、太陽系天体の地表面進化・表面に関連する内部進化がどのようなものであったかを探ることが可能となる。
 これらの研究を行う上では、衝突クレーター形成のスケーリング則が重要となる。ところで、上記の研究を行う上ではクレーターの大きさが数km〜数1000kmといった大きなスケールでの衝突を考える必要がある。 この場合クレーター形成過程において重力効果が非常に重要になると考えられている(これを重力支配域と呼ぶ)。 この重力支配域での衝突クレーター形成を調べるために、過去の研究では粉体標的(砂や岩石を粉にしたもの)が用いられてきた。 また、微惑星や彗星等の小天体は微小な塵の集合体であると考えられている為、粉体標的はこれらの小天体上での衝突クレーター形成を模擬する上でも重要と考えられている。
しかし、このようにして得られるスケーリング則は、粉体標的の種類によって結果が大きく異なることが知られている。 その為、スケーリング則に対して粉体の持つ標的物性効果を考慮する必要があるが、標的物性効果がスケーリング則にどのように関わるのかは分かっていない。 これについて明らかにするには、クレーター形成過程の直接観測を行い、それに基づいて標的物性効果を物理的に解明する必要がある。 一方従来のクレーター形成実験では、現象論的または定性的研究が主であった為、衝突クレーター形成実験で得られるデータを統計的に解釈し、スケーリング則の定式化が行われてきた。その為、クレーター形成過程の直接観測及びその物理的解釈に基づいてスケーリング則を調べるという研究はほとんどなされていない。
 そこで私は、クレータ形成過程のその場観測を行い、それを基にして重力支配域におけるクレーター形成過程の解明に取り組んできた。 2006年に発表した論文では、ビデオカメラによる上方からの観測および断面撮像法による観測から、重力支配域でのクレーター形成過程について調べた。 その結果、重力支配域を模擬した環境下では、形成されたクレーターの壁面は重力崩壊をおこす事が分かった(従来のスケーリング則では、この重力崩壊は考慮されていない)。 また、クレーター形成において、特に内部摩擦が重要な役割を果たしていることを明らかにした。 また、最近ではレーザー光を用いた測定手法により、その場観測を行い重力支配域におけるクレーター形成段階を記述する新しいスケーリング則(非圧縮流体を仮定した流体近似モデル)の提案と検証を行っている。

衝突放出物の質量-速度分布に対するスケーリング則の実験的研究

 衝突放出物の質量-速度分布は、固体惑星や衛星における天体衝突現象の定量的研究において重要である。 例えば、クレーター周辺の堆積物分布および2次クレーター分布の研究や、衝突による表層物質の再分配・混合問題の研究、また衝突による隕石・ダスト生成率の見積もり等において重要となる。 従来用いられてきた質量-速度分布に対するスケーリング則は、垂直衝突実験で測定された速度の遅い放出物(数m/s以下)のデータを基にして定式化されたものである。 一方、このスケーリング則が、高速(数10m/s以上)で飛び出す放出物に対して成り立つのか、また斜め衝突の場合どうなるかについては、調べられていなかった。 そこで、高速放出物の質量-速度分布を測定する方法として、アルミ箔を用いた手法(アルミ箔法)に取り組んだ。 このアルミ箔法を用いて高速(70m/s以上)放出物に対する質量-速度分布を、様々な衝突角度に対して測定した。 その結果、垂直衝突の場合では高速放出物の総量は従来のスケーリング則から予想される値よりも2桁以上少ないが、斜め衝突の場合では放出物の総量が増加することを明らかにした。 特に表面からの角度が30度以下の低角度衝突では、垂直衝突の場合と比べて2〜3桁多くなる事が分かった。
 この結果は、実際の天体衝突現象の多くは斜め衝突であることを考えると、放出物の総量が従来考えられてきたよりも大量になることを意味する。 例えば、火星や月を脱出する衝突放出物(これらは隕石や惑星間塵の起源になりうる)は、従来考えられてきた推定量よりも2−3桁多くなりうると考えられる。 また天体表層進化において衝突による表層物質の再分配・混合は、従来考えられてきたよりも高い割合で起こりうる事も意味する。

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もっと詳しく知りたい人のために

ここで紹介した研究は以下の論文に詳細がまとめられています。
  1. その場観測によるクレーター形成物理を調べた研究

    S. Yamamoto, K. Wada, N. Okabe, T. Matsui, 2006, Transient crater growth in granular targets: An experimental study of low velocity impacts into glass sphere targets, Icarus, 183, 215-224.

    O.S. Barnouin-Jha, S. Yamamoto, T. Toriumi, S. Sugita, T. Matsui, 2007, Non-intrusive measurements of crater growth, Icarus, 188, 506-521, 2007.

  2. 衝突放出物の速度分布測定実験

    S. Yamamoto and A.M. Nakamura, 1997, Velocity Measurements of Impact Ejecta from Regolith Targets, Icarus, 128, 160-170.

    S. Yamamoto, 2002, Measurement of impact ejecta from regolith targets in oblique impacts, Icarus, 158, 87-97.

    S. Yamamoto, T. Kadono, S. Sugita, T. Matsui, 2005, Velocity distributions of high-velocity ejecta from regolith targets, Icarus, 178, 264-273.

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堅い話はおいといてまずは実験室クレーターコレクションでも

031202-4:天体クレーターか実験室クレーターか区別つきます? 030701-6:堆積物をよく見るとコブコブがありますね。 031122-2:クレーター壁面の一部が崩壊しています。
030707-3b:うーん、マニアにはたまらない一枚です。 030707-3a:見事なRay構造が見られます。 030707-4:崩壊過程の複雑さがこの不思議な形状を生み出してます。
30-220-v223:斜め衝突の場合です。 030707-1:クレーターリム。なんともいえない艶めかしさ(?) 030221-10:いかにも実験室って感じ(後ろのノートが)。

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