はじめに

地球惑星科学は理学と呼ばれる学問領域に分類されます. 理学とは, 我々人類をとりまく自然界のかたち・なりたちを追及する学問です. それに携わる学者・研究者の目標は, 自然界の様々な現象と存在物の秘密を解き明かし, その知識とそれを知る喜びを他の人々を共有することであると言えます. 工学が近代産業と密接な関係を持つことと対比して, 理学は「役に立たない学問である」と呼称されることがままあります. しかし自然界のかたち・なりたちを知ることで知的好奇心を満足する人々に対しては, 理学(自然科学)は音楽や芸術のように日々の生活を豊かなものとするための糧として認知されることでしょう. 「人はパンのみて生きるにあらず」であるかぎり, 理学とそれに携わる者の使命はけっして失われることはありません.

地球惑星科学は一言でいうと, 「我々の住む地球はなぜ地球なのか?」 を探求する学問です. この疑問は古代ギリシャの自然哲学者が発した「自然は何であるか?」 という問いに通じるものです. 同じ理学に属する物理, 化学が自然現象からそれを支配する基本法則を抽出することを目指しているのに対し, 地球惑星科学は我々の住む現実世界でそれらの基本法則がどのように結合しその結果 何が起こっているのかを調べることにその特徴があります. 地球惑星科学における研究対象は我々をとりまく自然現象全てであるため, 基盤となる知識と用いる手法は物理, 化学, 生物, 地学, さらには工学に及ぶ幅広い分野にまたがって存在します. したがって地球惑星科学の推進には個々の事象に対するこだわり (愛着) と同時に, それにとらわれない幅広い視野を持つことが必要となります. 個々の事象に対する注意深い分析とそれらの統合を繰り返すことによって, 我々の地球観, 世界観を構築することが可能となるのです.

北海道大学理学研究科地球惑星科学専攻では, 以下に紹介します多くの個性豊かなスタッフが新たな地球観を構築するべく日夜研究に取り組んでいます. その研究対象は地球内部の構造と物性, 火山と地殻変動, 大気と海洋, 電離圏・磁気圏, そして惑星と多岐に渡り, 用いる手法も観測, 実験, 理論に数値シミュレーションと様々です. このような多彩なスタッフにより提供される研究教育環境は, 地球惑星科学の担い手を志す人はもちろん, 社会の他分野にて活躍を企する人にとっても他に比類のないものと確信します. 我々とともに新たな地球観, そして人類の知的財産の構築に貢献していこうではありませんか. 意欲ある若い力の参入を歓迎します.

組織・教官一覧


地球惑星物質圏科学講座 地球惑星物質論 藤野清志・ 菊地 武・ 三浦裕行
岩石学火山学 宇井忠英・ 新井田清信・中川光弘
地球化学 蒲生俊敬・ 角皆 潤
太陽系物理学 小笹隆司・ 橋元明彦
資源地質科学 土屋 篁
地球惑星進化科学講座 変動帯構造論 渡邊暉夫・在田一則・ 岩田圭示・前田仁一郎
地層解析科学 岡田尚武・ 藤原嘉樹・ 川村信人
有機地球化学 鈴木徳行 沢田 健
地球惑星流体科学講座 惑星物理学 渡部重十・倉本 圭
地球流体力学 林 祥介・ 小高正嗣
大気システム科学 播磨屋敏生
海洋気候物理学 見延庄士郎
陸水学 知北和久
気象学 遊馬芳雄
地球惑星物理科学講座 グローバル地震学 蓬田 清・ 吉澤和範
地震および火山学 西田泰典・ 笹谷 努
陸水学 池田隆司
地球惑星ダイナミクス 小山順二・ 森谷武男
応用力学系 前田 亟
協力講座「地球惑星変動学」
[地震火山研究観測センター]
地震観測研究分野 笠原 稔・勝俣 啓・高橋浩晃
海底地震研究分野 島村英紀・高波鉄夫・村井芳夫
火山活動研究分野 岡田 弘・大島弘光・森 済・西村裕一・青山 裕
地下構造研究分野 茂木 透・山本明彦
教育協力 [総合博物館] 資源地質科学 松枝大治
地層解析科学 箕浦名知男