発表の技法
はしもとじょーじ
Last Updated on 7 July, 2006.
発表の準備・心構え
まず当たり前のことですが、発表というのは聴衆がいてはじめて成り立つものです.だから自分の言いたいことをただ言えばいいというものではなっくて、聴衆が理解できるように話をしなければなりません.ふつう、聴衆がどのような人々で構成されているかは、あらかじめわかっているはずです.発表の準備をするときには、そういう想定される聴衆が発表を聴いてちゃんと理解できるかどうかを考えることが重要です.研究発表しようとしている内容については、ふつうは発表する本人がいちばん詳しいはずです.だから自分を基準にして理解できるかどうかを判定してはいけません.研究室内の発表であれば、自分と離れたテーマを研究している同級生が理解できるかどうかと考えることが、ひとつの目安になるでしょう.
それから、発表時間はきちんと守りましょう、最低限のマナーです(発表の途中で質問が入る場合には必ずしも予定通りに進まないこともありますが、これはまあある程度は仕方がありませんね).時間内におさめるため早口で発表するのは駄目.それでは理解してもらえる発表をすることはできません.時間に対して内容が豊富すぎるときは、短い時間で説明する方法を探してください.それが見つからなかったときは、時間内に終われるよう発表する内容を削ってください.
最後にちょっとテクニカルな(でもとても大事な)こと.聴衆にわかってもらう発表をするためには、発表の構造・流れがわかりやすくなっていることが非常に重要です.どういう構造・流れになっているとわかりやすいのか、ということを知るには以下の本が参考になるかと思います.
文書の作り方の本ですが、考え方は発表にも適用可能です.読んだことのない人は、ぜひ一読してください.
いい発表ができるかどうかは、個々人の能力によるところもあるかと思います.しかし、最低限のわかってもらえる発表というのは、誰でも努力すれば到達可能と思います.まずはそのレベルを目指してがんばりましょう.
発表練習の心得
(柴田直樹さんの文章に はしもとが加筆)
- 発表者は原稿を書いてくること
アドリブだとやる度に話が変わってしまい、変更点(注意点)が活かされないことが多い.内容を吟味する上でも、時間通りに話がまとまっているかをチェックする上でも、初心者は原稿を書くべきである.ちなみに名大では原稿がない人は発表練習を見てもらえなかった.練習では原稿は必須、本番は原稿を読まない.原稿の長さは2400字/10分を目安とする.
- 自分の研究の意義、主眼、課題を限定する
自分の話で何を言いたいのか、要点を洗い出しランクを付ける.話の流れを考えて(たとえ苦労した点でも)不必要だと思われる題材は削除する.その上で論理構成を考えて、話の順番を決める.一般に苦労話はしない方がすっきりした発表になる.また、研究をおこなった時系列に沿って発表すると、うまくいかないことが多い.スライドの枚数は7〜8枚/10分を目安とする.
- イントロに時間を十分費やす
1/4−則:「序論」「研究方法」「結果」「議論(考察)」に時間を均等配分.
研究分野が多角化している今日においてはイントロに1/3をかけても良い.イントロは聴いている人全員が100%理解できるように作る(詳細はわからなくても、学問上の意義はわからせる必要がある).イントロは研究分野の紹介(基礎的知識の提供)、研究目的、意義、話の構成等、雑多な内容を述べなくてはならないので、特に話しの組み立てに注意する.
- 一つのスライドには一つのテーマ
各スライドでは必ず言いたいことがあるはずである(無ければそのスライドは必要ない).余分な説明はかえって混乱を引き起こすので、各スライドで一番言いたい点を、論理的に整理し説明する.各スライドのポイントが全体の流れに沿っているかチェックする.各スライドの行数は10行程度を目安とする.また、説明をしないことは基本的に書かない.
- 図の説明は大局から詳細へ、図にはタイトルを付ける
図を見せるとき、最初に「何の図」であるかを述べる.それから図の詳細に入っていく.縦軸・横軸の説明は必ずすること.またその図で説明したいことを明示したタイトルを付ける.
- 発表練習は本番と同じ条件でおこなう
テクニカルな議論は一通り発表を終わらせてからおこなう.でないと、話の大局を見失ってしまう.発表が一通り済んでから、スライドを一枚一枚吟味していく.