ここに収録した実験の多くは, 京都大学総合人間学部の地球科学実験 ( 総合人間学部設立以前は,教養部の地学実験II ) で行われたものである. この実験では,マニュアルをつくらず, 常に新しい実験に挑戦することで, 実験の難しさと楽しさを学生に体験してもらうことを目標にしている.

新しい実験を次々行うのは決して楽ではないが, 「成功して当たり前」の実験では,教官自身が面白くない. 教官が面白くなければ,学生だって面白いはずがない. 科学は楽しくなければならないのである.

教官が面白い実験となると, どうしても難しい実験になりがちで, その理屈を正しく理解するには大学院生レベルの知識が必要な実験も多い. したがって,大学に入ったばかりの学生が理解するのは難しいが, とにかく自分の手で実験して,自分の目で観察することがまず第一である. 勉強はそれからすればよい.

ここに収録した実験は, この「地球科学実験」で行われたもののごく一部である. 失敗した実験も数多くある.しかし,それも立派な教育である. この学生実験では,これまで多くの非常勤講師の先生方のお世話になってきた. マニュアル化された実験に比べて, 桁違いに労力のかかる学生実験に協力していただいた, これらの先生方に深く感謝したい.

なお,これらの実験結果がこのような形で公開できるようになったのは, (有)メディアマックスジャパン (MMJ)のスタッフのセンスと技術力に負うところが 大きい. 特に,MMJ の飯澤氏には企画段階から大変お世話になった. 彼がいなければこの企画は実現しなかったに違いない. 最後ではあるが,飯澤氏をはじめ MMJ の優秀なスタッフに心から感謝する.

1997年4月 酒井 敏