流線や流跡線計算で時間スキームのオプションがあるけどどれがいいの?
- [Answer] : 対応している時間積分の精度の中では "RK4" (4 次のルンゲクッタ) が最も精度がよいです.
- ただし, 精度が高い分, 計算量も多いので, 計算資源が潤沢でない場合は, 大規模な流跡線解析に時間がかかる可能性があります.
- 精度を必要としない (流跡線の概観がわかればよい) 程度なら, "EU1" でも充分だと思います.
解析的な風系場から得られる流線の軌跡
- 以下は解析的な 2 次元の風の場を元に時間スキームを変えて流線計算を行った例です.
- 矢印が地衡風, 等値線が気圧, カラーが相対渦度 (いずれも規格化), 太い実線が計算された流線.
- このうち, 地衡風と渦度は気圧場から STPK のサブルーチンを用いて気圧から計算した値です.
- 風場は f 面での地衡風なので, 渦度場の等値線に完全に沿う風の場となっています.
- 矢印が地衡風, 等値線が気圧, カラーが相対渦度 (いずれも規格化), 太い実線が計算された流線.
こちらはデフォルトスキームのオイラー法.
こちらは最高精度の 4 次ルンゲクッタ法.
[考察] : 風の場は先述のとおり, 地衡風であるため, その流れは渦度の等値線に沿う方向を向かなければならない. したがって, 流線も渦度の等値線と同心円とならなければならない.
しかし, オイラー法では, 時間とともに流線が外に移動していることがわかる. 対して, ルンゲクッタ法では綺麗に同心円を描いている.
一方, オイラー法も渦度の等値線がゼロ付近の最も風速の強い場所では同心形となっており, それ以上ずれてはいないことがわかる. これらより, 以下のことが言えるであろう.
- オイラー法は風速が大きい (微妙な風速の変化がない, 割と大規模な) 場ではそれほどずれることはないが, 風速が小さい場では時間とともにずれが大きくなる傾向がある.
- ルンゲクッタの方が風速が小さい場でも正確に流線を表現出来ていることがわかる.
- 大規模な場ではオイラーを用いても問題ないと考えられる.