本計算では行列の正則性を保つために, あらかじめ平衡条件を考慮して その温度圧力で平衡にならない化学種を取り除くという作業をしている.
平衡にあるとき, その化学種の各相の化学ポテンシャルは一定になる. 逆に言えば, 各相での化学ポテンシャルの取り得る値を比較し, その値の取り得る範囲が重なるならば相平衡する可能性があり, 重ならないならば相平衡にないと言える.
例えば, 単成分からなる相の化学ポテンシャルはその相の標準化学ポテンシャ ルに等しい. そのため, 単相の液相, 固相が存在する条件ならば, それぞれの 標準化学ポテンシャルを相互比較することでどの相が生成されるか判定できる.
- 液相の標準化学ポテンシャル < 固相の標準化学ポテンシャル
--> 液相のみ存在- 液相の標準化学ポテンシャル < 固相の標準化学ポテンシャル
--> 液相のみ存在混合気体, 溶液, 固溶体の場合はもう少し状況が複雑になる. それぞれの化学ポテンシャルの取り得る値は混合のために変化するが, 最大値は標準化学ポテンシャルに等しい. そのため, 単成分からなる相の 標準化学ポテンシャルと比較することで以下のような判定ができる.
- 混合相の標準化学ポテンシャル < 単相の標準化学ポテンシャル
--> 単相は存在できない- 混合相の標準化学ポテンシャル > 単相の標準化学ポテンシャル
--> 混合層と単相は平衡するかもしれない以下の図は混合相と単相の平衡条件を用いない場合の計算結果. 赤が計算での 蒸気圧, 青が水の飽和蒸気圧, 黄色が氷の飽和蒸気圧. 2 bar より小さい圧力 範囲で値がずれているのは元素が少なくなった場合の計算法にまだ不備がある ため. そこを見ないこととすると, 平衡条件を加味した場合(左図)の方がより 良い計算結果となっている. 両図ともに圧力の小さい領域で飽和蒸気圧がずれ ているのは, 行列の非正則性の回避がうまくいっていないため. これは別頁で 詳述する.
最少モル数 1.0d-10 | 最少モル数 1.0d-30 |
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