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球面浅水系でのシア不安定
金星大気の線形安定性を調べる

伊賀 晋一(地球フロンティア)
2003 年 9 月 10 日
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タイトルぺージ


目次


研究の軌跡


金星スーパーローテーションの問題
雲層高度で 4 日で一周する流れ
  • 左 : 金星の紫外線画像.
  • 右 : 探査衛星によって観測された東西風の鉛直分布.


金星スーパーローテーションの成因
  • いろいろある


ギーラシ説
  • 水平渦粘性を仮定し, それによる拡散によって角運動量を定緯度へ輸送する.


ギーラシ説(つづき)


ギーラシ説(つづき)


ギーラシ説の問題点
  • 水平渦粘性の実体はなんでしょう ?


どのような系で考えるか ?


過去の球面浅水系での研究
  • Dikpati and Gilman (2001) : 太陽の Tachocline を想定.
    • Tachocline : 輻射層と対流層の間に存在するちょっと安定な領域. 表層の対流が貫入する.
    • Tachocline の由来 : Tachocline の内側と外側で回転速度が変化するから. 内側では剛体回転, 外側は西風加速.
    • 基本場の層厚は非一様.
  • Boyd (1982), Dunkerton (1990) : 赤道上空のパンケーキ構造.


用いた浅水方程式系


計算の方法


用いた基本場


観測される風速の緯度分布
  • これらをもとに基本場を考える.


基本場の設定
  • A, B, C, D の 4 パターンを考える.





固有値問題の結果: 剛体回転の場合
  • 赤道対称, 東西波数 1.
  • 中立波だけが存在.


基本場 A の設定
  • 基本場に風速を与える.


固有値問題の結果: 基本場 A の場合
  • 赤道対称, 東西波数 1.
  • 連続モードが現れる.
  • 一部のロスビー波は連続モードと重なってよく見えない.
    • 基本場の風は剛体回転に比べ, 高緯度で速く, 定緯度で遅い
  • 不安定なケルビンモードが存在する.
    • ケルビンモードと連続モードとの相互作用.





不安定化したケルビンモードの構造


角運動量輸送の定式化
  • 3 次元プリミティブ方程式系に対応する角運動量輸送を考える.
  • 変数分離して, 水平構造部分を取り出す.
    • 4 つの成分から構成される


角運動量輸フラックス
不安定なケルビンモードによる角運動量輸送をみる
  • 全体では赤道向きの輸送
  • 赤道向き輸送に寄与するのは urotvdiv 成分
  • 純粋な順圧不安定成分である urotvrot 成分は極向き輸送


基本場 B
  • 基本場 A の緯度間の速度差を強めた場合.
  • 順圧不安定, 慣性不安定は起こらない条件.


固有値問題の結果 : 基本場 B の場合
  • 赤道対称, 東西波数 1.
  • 左側の図の恰好は基本場 A の場合と同じ
  • 不安定なケルビンモードが存在する.
    • 成長率は基本場 A よりも大きい. 約 5 倍


不安定化したケルビンモードの構造 (基本場 B)
  • 基本場 A の場合よりも位相の傾きが大きくなる


角運動量輸フラックス (基本場 B)
不安定なケルビンモードによる角運動量輸送をみる
  • 全体では赤道向きの輸送.
  • 赤道向き輸送に寄与するのは urotvdiv 成分.
  • 純粋な順圧不安定成分である urotvrot 成分は極向き輸送.


固有値問題の結果 : 基本場 B の場合
  • 赤道対称, 東西波数 4.
  • 西向き慣性重力波と連続モードが交差するようになる.


成長率曲線の詳細


不安定化したケルビンモードの構造 (基本場 B, 東西波数 4)


基本場 C
  • さらに緯度間の速度差を強めた場合.


固有値問題の結果 : 基本場 C の場合
  • 赤道対称, 東西波数 1.
  • いろいろなモードが連続モードと重なるようになる.
  • モード B はロスビーモードと同定できるか ?


不安定なロスビー-ケルビンモードの構造 (基本場 C)


角運動量輸フラックス (基本場 C, 不安定モード A)
  • 全体では赤道向きの輸送.
  • 赤道向き輸送に寄与するのは urotvdiv 成分.
  • 純粋な順圧不安定成分である urotvrot 成分も赤道向き輸送.
    • モード B では urotvrot のみ寄与する.


角運動量輸送 (その他のモード)
  • どれも赤道向きの輸送.


金星への適用


最大成長モードの成長時間
  • 下から順に基本場 C, B, A.
    • 成長率が高度によって異なるのは, 基本場の風速が高度とともに変化するため.
  • 放射による減衰時間も示す. 上層では放射による減衰に負ける.


成長モードが成長できるための鉛直粘性の臨界値
  • 実線 : 等価深度と振動数から見積もる (H2σ). 温度分布は観測値を使う.
  • ×印 : 電波俺蔽観測
  • Lz = 2 π / ( N2/gH - 1/4s)1/2
  • H は等価深度, hs はスケールハイト


不安定モードは実際に成長できるか ?


不安定モードに対応する鉛直波長
  • 鉛直波長は 5 km 前後


観測される温度分布
  • 鉛直波長 5 km 前後の構造もある.
  • 重力波, 潮汐波かもしれないが….


まとめ: 金星と球面浅水系の部分


不安定モードの成因


モードの共鳴理論


共鳴理論の理解 : 2 次方程式系で考える
  • e は相互作用を表す項


2 次方程式系での共鳴の模式図


作戦
  • 部分系に分割することが困難
  • Hayashi and Young (1987) の方法を用いる
  • 擬運動量の代わりに擬角運動量を使う


擬角運動量の定式化
  • 擬運動量と同じく擬角運動量も保存量
  • 共鳴する中立モードの擬角運動量は逆符号


不安定モード = 連続モードとケルビンモードとの共鳴であるためには ?


連続モードの振幅
基本場 A の不安定ケルビンモードの近傍
  • 振幅を φI, φIIr, φIIi に分割
  • 係数の波数依存性





固有関数の振幅分布
  • 不安定モードの実部は σ = 0.06 の連続モードに近い
  • 不安定モードの虚部は σ = 0.04817 の連続モードに近い
σ = 0.04817 の連続モードを部分系のケルビンモードと考えると, 不安定モードはケルビンモードと連続モードを位相をずらして重ね合わせたものと考えられないだろうか?
  • どう重ね合わされている?


擬角運動量の符号


不安定ケルビンモードの擬角運動量
  • 臨界緯度を挟んで項緯度側に連続モードに起因する負の領域, 低緯度側に中立なケルビンモードに起因する正の領域


連続モードの振幅
基本場 B の m=4 西進重力波モードの近傍

















4 次方程式系モデルの振動数と成長率
  • e = -1.0 × 10-5のとき, 成長率に折れ曲がりがみられる.


まとめ (モード共鳴部分)
  • 球面浅水モデルで得られた不安定モードは, ケルビンモードと連続モードとの共鳴によるものであろう.
  • 擬角運動量を用いると中立モードと連続モードとの共鳴による不安定が起こるか否かをある程度判定できる.





エネルギーフラックスの定式化
  • 球面浅水系でのエネルギーを, 3 次元プリミティブ系と対応させて定義する.
  • A' = 0 になる (単純な浅水系では h'2 が出てくる).


エネルギーフラックス

















参考文献
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Odaka Masatsugu 2003-09-10