Fluid Dynamics in Earth and Planetary Sciences (FDEPS)  Second FDEPS Workshop  Dec 04 - Dec 08, 2000  Graduate School of Mathematical Sciences, University of Tokyo


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講演
太陽プラズマにおける電磁流体力学 〈対流,ダイナモ,リコネクション〉
草野完也(広島大学大学院先端物質科学研究科)

要旨

太陽表面においてはフレアを代表とする様々な電磁流体現象が発生することが 知られており,その影響は太陽系全域に与えられる.こうした活動の源は太陽 外層における対流活動がダイナモ過程を通して磁場を周期的に再生成すること にある.本講演では太陽における対流とダイナモ及び太陽フレアの主因と考え られる磁気リコネクションの研究に関してその問題点と現状を紹介する.

ダイナモ理論により磁場の再生成のためには天体の微分回転(Ω効果)と流れの ヘリシティ(α効果)が重要であることが指摘されている.また,Boussinesq近 似やanelastic近似を用いた3次元直接シミュレーションによって回転球殻にお ける対流とダイナモ過程は数多く研究されてきたが,太陽活動周期の基本性質 を再現する直接計算はまだなされていない.一方,太陽表面振動から太陽内部 構造を逆問題として明らかにする日震学の進歩によって,太陽内部の平均流れ 構造が観測的に明らかにされつつあるが,その結果も従来のシミュレーション とはかなり異なるものである.こうした理論計算と観測との隔たりを説明する ために,さらに大規模な乱流計算や圧縮性を近似なしに扱う計算の試みが進め られている.

太陽内部のダイナモ過程によって生成された磁場は太陽表面に浮上し黒点を伴 う活動領域を形成することでフレアなどのエネルギー解放活動の源として働く. しかし,その結果として太陽コロナは数百万度にまで加熱され,コロナプラズ マの磁気レイノルズ数は極端に大きくなるため,磁気エネルギーを熱化して解 放するためには拡散領域を局所化した磁気リコネクションを起す必要がある. 近年のX線による太陽観測の結果も太陽フレアが磁気リコネクションを原因と して発生していることを裏付けている.しかし,そもそも何がリコネクション をドライブするのかというフレアの原因に関する基本課題は明らかにされてい ない.講演ではこの問題に対する理論的な可能性を議論すると共に,今後のフ レア研究の計画を紹介する.


FDEPS スタッフ fdeps(at)gfd-dennou.org
2000/12/01 更新 (by 林 祥介)