エクマン層
エクマン層は回転系の粘性境界層の一種で, 水平方向の境界で与えられた力が, 粘性によって伝わる範囲を言う. この境界層の厚さは, 地球が一回転する間に力が伝わる距離で決まるので, 粘性係数が大きければ厚く,回転の効果が強ければ薄くなる.
海面上を吹く風による エクマン層では, 粘性係数が深さによらなければ, 海面での流速が風の向きに対して右45度 (北半球の場合)で, 水深が大きくなるにつれて時計周りに回転しながら流速が小さくなる. この流速ベクトルの終点を結ぶと螺旋形になることから, エクマン螺旋と呼ばれる.
エクマンらせんの流速を鉛直積分した正味の流量を エクマン輸送といい, 北半球では 風向きに対して右に直角方向 になる.
この関係を,エクマン層全体に働く力のバランスで考えてみると, 風が水面を引っ張る力を 全体の流れ (正味の流量) に働くコリオリの力が 打ち消すような関係になっている. つまり,エクマン層ではコリオリの力と 風が水面を引っ張る力が逆向きで, その強さが同じになっている.
実際の海洋では, 水の分子粘性係数ではなく, 乱流拡散係数を考える必要がある. この係数は, その場所の乱流の強さに依存するので, 必ずしも一定の値にはならないが, エクマン層の定性的な形は変わらない. 実際の海のエクマン層の厚さは,場所にもよるが, だいたい100m のオーダー 2, 7) である.