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最初の実験がもっともうまくいく
- 初代の実験は実験設備も全くなかった頃, ありあわせの材料と木村竜治著「流れの科学」を 片手にはじめたものであるが, 最初の実験で非常にきれいな写真が撮れてしまった.
これに気をよくして, もっと本格的な実験装置 (実験装置2 および 実験装置3) の製作 をはじめたのだが, お金や労力をかければかけるほど気にいった写真が撮れず, 結局, 初代の実験写真を越える写真が撮影できたのは 10 年後の ことであった.
よい実験とよい教育は両立しない?
- 水槽の内側と外側の温度の測定は, 当初棒温度計を使って行っていた. ところが,回転台にはカメラを載せるための支柱が4本あり, これが回転している合間をぬって測定をしなければならない. これは危険なので,小形のデジタル温度計を作って, 流れの様子と同時に ビデオカメラに写し込むようにした.
これで安心, と思いきや, 回転している支柱をかいくぐって 棒温度計を読み取る職人的技術を会得した学生から, 「合理化反対」のシュプレキコールを受けるはめになってしまった.
地球科学はやっぱり体力 ?
- ビデオに記録したナイロンボールの軌跡から, 3次元的な位置を割り出すにはその座標を読み取らなくてはいけない. 機械的な画像処理によりそれができればカッコいいのだが, この実験をした1985年当時そんな機械はとても手が出なかった. そこで, 大きなビデオモニターに座標軸の目盛りを書いて, 人間の目で読み取る事にした. ところが, まだビデオデッキがようやく家庭に普及し始めた頃で, テープを静止させると画像が揺れて読み取れない. 結局, 通常の再生速度で読み取るため, 各座標に読み取係と記録係を一人ずつと時計係を一人 (合計7人) おいて, 時計係の合図で3つの座標を3人が一斉に読み取り, 決められた順番に声をあげて記録係に伝えることにした. この方法で訓練を積んだ結果, サンプリング間隔を2秒まで縮小することに成功した. まさに人海戦術の勝利であった.
もっと光を!
- 液晶カプセルで実験を始めた当初は, スリット光の光源として スライドプロジェクタを使用していたのだが, どうも液晶の色を鮮やかに撮影することができず悩んでいた. 液晶の量が少ないと色が薄いし, 多くすると今度は流体全体が白濁してしまい, かえってコントラストが悪くなる.
白濁するのはきっとカプセルの素材が樹脂で作業流体の水と 屈折率が異なるからだろう. ならば, 流体の方の屈折率をカプセルにあわせてやれば, きれいに見えるに違いない. などと四苦八苦していた頃, 液晶カプセルで可視化した実にきれいな 写真を発見した. 早速, 面識もない著者 (木本日出夫氏:大阪大学) に いきなり電話したところ, 電話の向うから「いや, 簡単に見えますよ」という答えが返ってきた. 話を聞くと私の実験との違いは光源くらいしかない. 光の強さだけでそんなに変わるかなぁと 半信半疑で光源のメーカーからデモ機を借りて実験したところ, なんと実にきれいに見える.
学生:「一体, 今までの苦労はなんだったんでしょう?」
私: 「いや, まあ... 実験なんてこんなもんだ. 君たちもいい経験をしたね.」