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はしもとじょーじ
Last Updated on 4 Nov., 2003.



12.金星におけるカコウ岩の探索
   [杉田助手(東大・理)との共同研究]

 近赤外域にある特定の波長を使うと、金星の全面を覆う雲と透過して地表を観測することができる.この近赤外の窓を利用して、金星にカコウ岩を発見する可能性について検討した.
 現在までのところ、カコウ岩の存在が確認されているのは地球だけである.これは、カコウ岩を生成するには水(海洋)と沈み込み(プレート・テクトニクス)が必要であるためと考えられている.現在の金星には海洋もプレート・テクトニクスもないが、もし金星にカコウ岩を発見できたなら過去の金星に海洋やプレート・テクトニクスがあった証拠と考えることができる.実際に、金星大気の水素同位体比からは過去の金星に大量の水があった可能性が示唆されており、過去の金星には海洋があった可能性がある.海洋の存在は生命の発生・進化にとって重要であることを考えると、カコウ岩を探索することは金星の生命を考えることにもつながると言える.
 金星地表を探る観測は、これまでいくつかのグループによってなされてきたがカコウ岩は未だ発見されていない.しかし、それらのグループの解析では雲による反射の影響が無視されているため、正しい結果を与えていない可能性があった.そこで、我々は雲の反射の影響を考慮に入れてデータの再解析をおこなった.その結果、結論を出すには現在あるデータではその質が不十分であることが明らかとなったが、予備的な解析の結果からはカコウ岩の存在が示唆されることが示された.

Hashimoto, G.L., and S. Sugita (2003) On observing the compositional variability of the surface of Venus using night-side near-infrared thermal radiation, J. Geophys. Res., 108(E9), 5109, doi:10.1029/2003JE002082. Link

解説文(PDF)


George L. HASHIMOTO