AGCM5 による Held and Suarez (1994) テスト

概要

DCPAM の力学過程の実装実験の参照用として, AGCM5 において Held and Suarez (1994) の力学コアベンチマークテストを行った. このテストは, 大気大循環モデルの力学過程を 評価するためのベンチマーク計算である. この実験では, 温度場にニュートン冷却を与え, σ < 0.7 の速度場に レイリー摩擦を与え, ニュートン冷却で大気をある温度分布に近づける. (詳細は Held and Suarez (1994) を参照のこと).

• レイリー摩擦とニュートン冷却の効果は, 力学過程計算後に得られる t+Δt の値 (具体的には, 東西風速, 南北風速, 渦度, 発散, 温度) に対する補正として与えられる. つまり, この2つの効果を 離散化ドキュメント - leap frog による時間積分と時間フィルター における (51) の右辺の第2項, 第3項と並ぶ形で として与えている.
  
  これら効果を 2Δt の前方差分として与えた場合の実験については こちら を参照のこと.

環境, およびパラメータは以下の通り. 結果は下記に記す.

実験環境

実験設定

実行結果に関する付加情報

参考文献

• Arakawa, A., Suarez, M. J., 1983: Vertical differencing of the primitive equations in sigma coordinates. Mon. Wea. Rev., 111, 34--35.
• Asselin, R. A., 1972: Frequency filter for time integrations. Mon. Wea. Rev., 100, 487--490.
• Held, I. M., and Suarez, M. J., 1994: A proposal for the intercomparison of the dynamical cores of atmospheric general circuation models. Bull. Am. Meteor. Soc., 75 , 1825--1830.

初期値および実験結果

初期温度場
σ=0.97	σ=0.52	最上端である σ=0.02 では 250K で一定.
実験結果
200 日目から 1200 日目までを平均した, 帯状平均東西風	σ=0.2 近傍の帯状平均東西風の時間変化
200 日目から 1200 日目までを平均した, 帯状平均南北風	200 日目から 1200 日目までを平均した, 帯状平均温度	200 日目から 1200 日目までを平均した, 鉛直風
地表面気圧の平均値の時間変化. 1200 日でおよそ 8 mb ほど減少していることが分かる. 一方で, レイリー摩擦とニュートン冷却を2Δt の前方差分として与えた場合 には, 1200 日でおよそ 0.002 mb 弱減少する.